叶わぬ恋。






「どうかしたの?」



不思議そうにわたしを見てくる鈴森くん。



そしてその顔を見るなりわたしは、
昨日の昼休みの出来事を思い出してしまう。





”ドキ、ドキ”



耳からじわりと熱くなってくる。




「・・・おーい夏目さん」


「・・・え、あっ、いや。考え事・・・してただけ!」




「ははっ、夏目さんでもちゃんと考え事とかするんだ?」


歯を見せて楽しそうにからかってくる鈴森くん。





「う゛っ・・・、わたしだって?そりゃ?人間ですからね」


「はははっ、そうでした。君も人間でした」




・・・本当、なんでだろう。


こうやってどうでもいいこと話しているだけなのに
嬉しくて、楽しくて、少し胸が熱くなる。





「夏目さん今日宿題やってきた?」


鈴森くんは鞄から教科書を取り出しながら言ってきた。



「あ、やってない」



昨日はわたし、
昼休みのあの鈴森くんとのことと、
矢野くんに言われた理解不能だったことで
頭がいっぱいいっぱいだった、

・・・なんて、鈴森くんに言えないよ。