そうして俺は水鳥嬢と一緒にいることを許され、今こうして隣に並ぶことを認められた。

橋渡しをしてくれた御堂会長にも二人でお礼を伝えに伺い、その時に『自分の仕事を知ってもらうために、二ヶ月預けて欲しい』と言われた。

今後の仕事のためにも御堂会長の仕事を知ることは必要不可欠であり、何より水鳥嬢の成長に繋がるであろうと考え、俺達はその提案を受けることとなった。




「どうだった?会長専属の秘書生活」


「秘書というほどのものだったかは微妙ですけど、勉強になりました。広報だけでなく現場も体験することが出来ましたし、何より自分が『使えない存在』だと実感しました。悲しいですけど」


「最初から使える人間なんかいないさ。それを育てるために、来年度から俺の下で働かせるんだ。覚悟しとけよ」


「・・・お手柔らかに」




水鳥嬢は勤めていた化粧品メーカーを退職した。

引継ぎに時間がかかることを覚悟していたのだが、長期休暇の際に残した資料を元に先輩社員や後輩が仕事を分担していたおかげで、それほど期間を必要としなかった。

二週間程度の簡単な業務移行と引き継ぎの挨拶を済ませ、有給休暇を利用して御堂会長の元へと飛んだ。

結局最後まで素性を明かすことなく、イチ社員である『南 水鳥』としてその職を退いた。


まぁ、転職先が俺の会社であることから『困った時には連絡します』という、ちゃっかりした伝言まで受け取っていたから、心配することもなかったのだろう。