柴田と南の間で進められていた婚姻話は白紙になった。
柴田の御曹司は少しだけ残念そうな顔をしていたが、それが本心ではないとすぐに分かった。
後から水鳥嬢に確認すると、高校の頃から片思いをしていてなかなか振り向いてくれない人がいる、とのことだった。
親同士は乗り気で進めていたようだったが、自分の子供たちがそれぞれに自分で考えていることを知り、結局は子供自身の意志を尊重することを選んでくれた。
それは祖父がいつも口にしていた『責任はいつも自分自身にある』という言葉を、柴田の社長が大切にしてくれていたおかげでもあった。
結婚という家同士の繋がりが無くても、柴田財閥と南の経営する化粧品メーカーは提携をすることを決めた。
その橋渡しとして、御堂会長が名乗りを上げてくれた。
ウェディングイベントで柴田財閥は素材系全般と装飾や会場に関わる大部分を担当してくれることとなり。
ヘアメイク全般とモデル事務所等とのパイプは南ホールディングスが担当することになった。
家の事情も全てひっくるめて解決する一番の方法は、何よりも双方にとって不利益にならない業務内容を提案すること。
そして、それは俺自身の仕事を成功させることにも繋がる。
一石二鳥と言うととても聞こえは悪いが、水鳥嬢も仕事も諦めないで済む道はこれしかなかったのだ。
呆れたように笑う柴田の社長からは『今度は祖父を連れて来い』と言われ、水鳥嬢の両親からは『今後の展望をしっかり提示するように』という上司からの課題のようなものを出されてしまった。

