だから私は雨の日が好き。【花の章】






本当は、家族一緒に世界中を回りたかった父。

しかし姉が頑として『これ以上転々とするのはイヤ』という一言で、父の夢はあっさり砕かれた。

仕事の都合上、一か所に長く留まることは難しく、世界中を飛び回りながら活動する父のスタイルはその頃には確立されており。

それゆえに合間に日本に寄ることも出来た父と母は、『離れているけど結構頻繁に会いに来る』という程度の感覚だった。

日常の生活は母方の祖母が色々としてくれてはいたものの、マンションとお手伝いさんを与えられていた俺達は生活に困ることなど無かった。



ただ一人。

『そんな生活をしていては、世の中に馴染めない』と、俺達姉弟に喝を入れてくれたのが資延方の祖父で。

俺達と一緒に過ごす時間を増やすために資延家の仕事を息子へ譲り、五十歳にして初めて『父親』の立場を満喫していた。



其処に居たのは、柴田の家も資延の家も関係のない、ただの厳しい『じーちゃん』だった。




「俺の身の回りの世話は基本は姉さんだったから、俺は極度のシスコンなんだろうな。じーちゃんは確かに資延家の中では偉い人なんだろうけど、俺にとってはただのじーちゃんでしかないんだ。でも、こんなところで『資延』の名前に助けられるとは思わなかったけど」


「別に、それだけで父や母が納得した訳じゃないですよ。尾上さんだから、納得したんですよ」


「どうだか。水鳥嬢のお父さん、『この先君はどうするのかね?』なんて言ってただろ?悪いけど俺は、水鳥嬢の家の仕事は性に合わないからな」


「わかってます。私だって、家を継ぐ気なんてないですから」