「じーさまの出した条件が『婿養子』だったってわけ。親父にしてみれば、自分が本当に家族になれるってことの方に大喜びで、なんの躊躇いもなく資延家から除籍になったんだよ」
「そうだったんですね。うちの親もそこまでは調べることが出来なかったみたいです。結局、お父様の素性はまだ守られたままですもの」
「尾上の名前になったから、余計に素性がバレづらくなったしな。親父にとってもじーちゃんにとっても、これでよかったんじゃないかと想うよ」
父と母は、母の高校卒業を待って結婚。
元々の活動拠点であるフィレンツェへと旅立つこととなる。
言葉も何も通じない場所での出産に不安がないわけではなかったが、母は一緒に旅立つことを快諾した。
母方の祖母も一緒に渡欧出来るように父が用意をしていたことを知ったのは、出発する前日のことだったそうだ。
出産に立ち会いたいと言った母の家族たち全員をイタリアに招き、ほどなくして姉が生まれた。
姉が飛行機に乗れるようになってからは、世界中で写真を撮りながら、いつも家族三人で過ごしていたという。
父が望んだ家族がいつも一緒に居られる環境で、父は沢山の写真を撮った。
一人で見つめていた世界が見つめる視点を変えていくその様は、一人の写真家として父を大きく成長させた。
「だから姉さんだけイタリア国籍持ってたんだよ。今はもう、日本の国籍になってるけどさ。俺を産むときは日本にいたから、俺はずっと日本国籍」
「そこから何年くらい日本にいらっしゃったんでしたっけ?」
「六年。俺が小学校にあがる時に姉さんと暮らし始めたからな。親父の拠点は結局イタリアだし、それでも家族らしいことは沢山してくれた記憶はある。イベントの度に帰って来るくらいなら、日本にいればいいのに、とも思ったけどな」

