「それは・・・、本当にサイテーですね」
「だろ?女子高生にとっては恐怖だっただろうし、親父は何も考えてなかったんだよ。でも、そのおかげで親父は尾上の家族に会えたんだ。わかんねぇもんだよな」
不審者としか思えない父の行動に、母は物凄い勢いで詰め寄ったという。
しかし、元々人と会話でコミュニケーションをとるのが苦手な父はただ謝ることしか出来なかったのだ。
そんな父に苛々した母はここぞとばかりに自分の愚痴をぶちまけ、フラれたばかりだというのに自分の言いたいことを言い終わるまで父を付き合せた。
その間、父は簡単な相槌を打つだけで文句を言うこともなく、時折突然シャッターを切っては母を怒らせたのだとか。
気付けば辺りは真っ暗になっており、女子高生一人で帰らせるにはあまりに遅い時間になっていたので家まで送っていくことになった。
自宅では家族全員で出迎えをしてくるほど母の心配をしており、送り届けた父は英雄扱いでそのまま家に引きずりこまれたそうだ。
未成年であるにも関わらず間違って酒を口にしてしまった父は、思いの外饒舌で、とても感情豊かな人物であると母の家族に認定された。
当然酒を飲むのが初めてな父はそのまま寝てしまい、初めて逢った名前も知らない母の実家で一晩を過ごすこととなった。
翌日、目が覚めた父が目にしたのは。
朝食が並ぶダイニングテーブルと、そこに順番に座り朝食を食べる家族の姿だった。
思わずカメラに手を伸ばしファインダーを覗いた父を叱りつけ、手を引いて自分の隣に座らせた母が『あなたも一緒に食べなさい』と言った途端に父は号泣したのだそうだ。
父の求めていた『普通の家族』の輪の中に、自分も入っていいと言ってくれた。
ファインダー越しに羨むのではなく、自分もその輪の中にいるという事実は、父にとって感動以外の何物でもなかった。

