父は学校に通う傍ら、自身のカメラで写真を撮り続けた。
持っていたのは、祖父が祖母からプレゼントしてもらったとても旧式の昔ながらのフィルムカメラで。
一眼レフでもなんでもない、ただのフィルムカメラで撮った父親の写真は、とてつもなく平凡でとてつもなく温かかった。
たどたどしい言葉で会話を出来るようになると、父の写真について話を聞きたがる人が増えていった。
同じ学校の芸術科に通う学生が父の写真を気に入り、それが学校中の話題になって廊下や美術室に写真が飾られていき、学校中で父の個展を開いているようだったという。
『学校へ訪問させろ!』『噂の写真を見せろ!』と学校を訪問する人が後を絶たず、仕方なく休日だけ解放したことにより、父は世界中から絶賛の声を受け取ったのだ。
若干十七歳の少年が、学校中の壁を使って貼った写真の全ての被写体は『家族』。
其処に写るはずのない『確かな愛情』が、父が心の底から望み、全ての人に届けたいものだった。
「親父が家を飛び出して写真で騒がれてるらしいぞ、まではまだよかったんだけどな。二十歳で急に『子供が出来ました。婿養子になります』じゃあ、縁遠くもなるよな」
「二十歳・・・ですか?それは随分と・・・」
「若いよな。まぁ、その頃には写真家として十分過ぎる稼ぎがあったみたいだけど」
「随分と反対をされたのでは?」
「じーちゃんはしなかったみたいだけどね。資延家的には大問題だったみたいだ。親父は資延と縁を切りたかった訳じゃないんだ。ただ、普通の家庭に憧れて、それをくれたのが母さんの家族だっただけなんだよ」

