「それにしても、尾上さんこそどうして黙ってたんですか?おじい様が柴田財閥、現社長の世話役だったなんて。私なんかよりずっと太いパイプをお持ちじゃないですか?」
「・・・んー、じーちゃんは俺達のこと大事にしてくれてるけど、叔父さん達は父さんと俺達のこと良く思ってないんだ。だから『資延(スケノベ)』の家にはなるべく関わらないようにしてる、ってだけだ」
俺の『奥の手』というのは、祖父の名前を使わせてもらうこと。
祖父は代々柴田の後継者に仕えるのが仕事で、その世話役を務めていた人物なのだ。
当時の柴田家次期当主を支えるために資延の家に養子として迎えられた祖父は、早くに長男(俺にとっては叔父に当たる方)を授かったのだそうだ。
婿養子だった祖父は資延一族から良い待遇を受けたとは言い難く、自分の息子を守るために必死に柴田に仕えていたという。
その甲斐もあって現会長から世話役に指名をされ、祖父は資延の中で確固たる地位を築いたのだ。
会長が現役を退く際に息子である現社長の世話役をも任され、現在はその地位を自分の息子に譲っている。
現役を退いたとはいえ柴田の家にとって祖父の助言は無くてはならないものであり、客観的であり、かつ本当の親のように心配をしてくれる祖父を信頼してくれているのだと漏れ聞いていた。
恥ずかしそうにその話をしてくれた祖父は確かに厳しい人であるが、それ以上の優しさがにじみ出る人でもあり、俺達の育ての親なのだ。
両親が世界中を飛び回る仕事をしていたため一か所に留まることは難しく、転校を嫌がった姉が俺と二人で日本に残ることを決断した。
その決断の結果、『面白そうだから』という何ともフザケタ父親の許しを得て、小学校に上がる頃から姉と二人でマンション暮らしを始めた。
そんな俺達親子を見かねた祖父が、マンションでほぼ一緒に暮らしてくれていたのだった。

