「行ってらっしゃい!お義姉さんっ!智哉さんっ!」
「行ってらっしゃい。帰ってくるの、待ってる」
俺の手をぜぇぜぇ言いながら掴んだかと思えば。
俺より先に、姉夫婦に向かって返事をする。
ホントに間に合わせやがった、と感服するも、無理したんだろうな、と心配もした。
安心したように笑ってゲートをくぐって行った姉夫婦の背中を見ながら、その寂しさを分け合うように強く手を握り締めた。
俺の気持ちに敏感なコイツは、きっとニヤニヤしながらそれを受け止めているのだろう。
それでいいと想った。
本当の俺の顔を知っているのは、家族とコイツだけで十分だと想った。
「・・・行っちゃいましたね」
「そうだな。ってか、ヒール大丈夫か?」
「何とか。スーツケース引っ張って全力疾走なんて、もう二度としませんから」
「そうしてくれ。目立ち過ぎだ」
前はもっと立ち振る舞いに気を遣っていたはずなのに、いつの間にか普段の立ち振る舞いにも素が垣間見えるようになってきた。
それは俺といる時限定であることを知っているので口出しする気はない。
むしろ、俺の横にいることが自然になってきたということだ、と解釈していた。
彼女が引きずってきたスーツケースに手を掛け、それを引いて歩く。
以前は恐縮していたその行為も、今では俺に任せてくれるようにまでなった。
俺に全てを預けてくれるという安心感。
それを得ることが出来たのは、コイツが隣に並んでくれるようになったからだ。

