とんでもなく自己中な発言をしているにも関わらず、そこに姉の愛情を感じてしまった俺は、とんでもなくシスコンなのかもしれないと自覚せざるを得なかった。

嬉しそうに笑う姉と、姉の勢いに負けて困ったように笑う義兄さんを見て、俺の選んだ人は間違いではないと実感できた。




「よかったわ。和久の連れて来た子が水鳥ちゃんのような子で」


「なんだ、ソレ」


「言ったはずだわ。『憧れがあるでしょう?』って。・・・現実にしなさいよ」


「・・・わかってるよ」




水鳥嬢は目を真ん丸にして『何の話?』と問いかけてくる。

曖昧に誤魔化して笑い『後で』と小さく声を掛けると、それを遮るように姪が俺に抱き付いて来る。

一人前の女の顔をして『カズはひめのものなのに』と水鳥嬢に喰ってかかっていた。

一番のライバルが姪である事実は、俺達を和ませる以外の何物でもなかった。




「さて、カズ。落ち着いたところで、私から話があるんだけど」


「あぁ、そうだったな。何だよ、改まって」


「決まったわ、転勤」



静かな声が広いリビングに響いた。

義兄さんが優しく姪を呼び、俺の目をじっと見つめる姪に優しく笑いかける。

その目には明らかな『諦め』が滲んでおり、俺の傍にいることを渋々諦めるように膝からゆっくり降りていった。

義兄さんが手を伸ばし姪を抱き締める。

しがみついている姪の肩が震えているように見え、背中をさする義兄さんが切なそうに笑った。