だから私は雨の日が好き。【花の章】






彼女の言葉は、俺の気持ちを大きく揺さぶった。




――――感情を『殺して』しまっている気がします――――




あぁ、そうか。

俺は感情が欠落していたわけではない。

俺は感情を『殺して』しまっていたのか。


堪え切れずに笑った笑い方は、いつもの取り繕った顔ではなかった。

何かから解放されたかのように笑う俺を見て、彼女は見たこともないような優しい顔で笑った。

その彼女の表情は、慈愛と優しさに満ちた『女の顔』だった。



不覚にもその顔に動揺した俺は。

赤くなったであろう自分の顔を誤魔化すために、咳払いをして目線を逸らした。




「あ・・・、水鳥じょ――――」

――――――ガチャッ、バタン!――――――




彼女の名前を呼ぼうとした瞬間、俺の部屋のドアは乱暴に開けられた。

乱暴と言っても、子供を気遣ってそれなりに優しい開き方ではあったが。

まさか誰かが入って来るなどと思いもしなかった俺達は、肩を震わせて驚いた。


そこにはにっこりと極上の笑みを浮かべた姉と、申し訳なさそうな義兄さんが立っていた。




「和久。お客様がお見えになるなら、言ってくれないと」


「姉さん・・・。違うんだ、これはっ!」


「言い訳なんて見苦しいわよ。初めまして、姉の美和と申します。ちょっと和久をお借りしていきますね」


「姉さん、聞いてくれって!」


「和久。こちらにいらっしゃい。智哉はお客様のお相手をして差し上げて」