だから私は雨の日が好き。【花の章】






「俺は、そのままの表情で仕事が出来る人間になって欲しいと思う。それは、俺の部下にしたいとか、そういう問題ではなく。今後、君が社会人として生きていく上で、一番苦しくない方法だと思うんだ」


「でも・・・」


「生憎と、俺は君の素顔を知ってしまったからね。仕事で見せることが出来るように、これから促してあげよう」


「でも・・・っ!!!」


「何か問題があるかい?」




真剣な目をした水鳥嬢が、俺を見つめたままじっと動かない。

その目はとても悲しそうな目をしていた。

想い出したのは、俺がこの家を出て行くと言った時の姪の眼差し。

彼女の目はその時の姪にそっくりだった。


俺を見つめたまま何か言いたそうな顔をしているので、目線だけで言葉を促す。

そういう動作に敏感な彼女は、目を逸らして小さく息を吸った。

その行為が『緊張している』という言葉の代わりに響いた。




「・・・私を気にかけてくれるのは、とても嬉しいです。このままでいいなんて、言ってくれる人はいなかったから」


「じゃあ――――――」

「でもっ!それじゃあ、尾上さんの本当の顔は、どうなってしまうんですか?」


「・・・え?」


「失くしてしまったわけではないのに、尾上さんは感情を『殺して』しまっている気がします」


「・・・」


「本当の私を見つけてくれたから、私だって尾上さんを見つけたいです!」