「なぁ、水鳥嬢」
「・・・なんでしょか・・・」
消え入りそうな声で返事をした彼女の顔は、恥ずかしくして顔が引きつっていた。
その顔を見るとまた吹き出しそうにもなるが。
仕方ないな、と柔らかい笑みが浮かんできたので、それに逆らうことなく笑って見せた。
目を見開いた水鳥嬢は、恥ずかしさではなく驚きで固まった顔をしていた。
「確かに、君が無防備に浮かべる表情や態度は女性に好かれるものではないかもしれないけどね。本当の自分を隠しておくのは、君にとって辛いことなんじゃないのかい?」
まるで子供をあやすような口調だなと自分で自覚しながらも、姪に言い聞かせるような優しい声が自然と漏れた。
仕事をしている時と違うのはお互い様のようで、水鳥嬢は目を真ん丸にして俺を見つめていた。
俺が言い聞かせている言葉に不快感を感じずにいてくれたことだけは、手に取るように分かった。
「・・・辛くは、ないです。もうずっと、当たり前だったので」
「そうか。でも、本当の自分を隠し続けると、何が『自分』なのか分からなくなるよ?」
「・・・それは、尾上さんの経験ですか?」
「そうかもしれないね。俺は、本当の自分の顔を探すことすら止めてしまったから」
自分の本当の顔を知る者は少ない。
知っている俺は、それを隠し続けて、いつしか見失ってしまったようにも感じる。
だから俺は。
『人間としての感情』に欠陥があると感じるのかもしれない、と。
随分前に疑問に想った考えの答えを、目の前の彼女のおかげで導き出すことが出来た。
それはとても自然に浮かんだ答えで。
俺の胸の中にストンと落ちてきた感情だった。

