だから私は雨の日が好き。【花の章】







「あぁ、ホント強い。なんなんだ、その強さ」


「さぁ?遺伝じゃないですか?」




既に二日酔いの兆候である頭痛の気配を感じながら、隣でけろりとしている水鳥嬢に目線を向ける。

店を出た頃にはとっくに十二時を過ぎていて。

終電なんてものは動いていない時間になっていた。

店の外の空気は冷たく気持ちがいい。

飲んでいる間中、ポケットにしまわれたままだったソレに手を伸ばした。




「水鳥嬢」


「なんですか?」


「煙草一本吸う間、待っててくれます?」


「ご馳走になっているのに置いて帰る程、薄情じゃないですよ」


「知ってるよ」




そう言って、俺は煙草に火を付けた。

店の前にはご丁寧に椅子と灰皿が設置されていて。

この店の一番のお気に入りは、帰り際に座って煙草を吸えることだと思った。

煙が風に崩されていく様子が。

俺はとても好きだった。




「家は?何処?」


「ご心配なく。自分で帰れますから」


「送られるのは好きじゃないんだろ?男に家を教えるのも、好きじゃない」


「わかってるなら、そんな無粋なこと聞かないで下さい」


「俺は聞くさ。水鳥嬢は俺にならそれを教えてもいい、と想ってるのを、知ってるから」




目を逸らし、俺の言葉なんて聞こえなかったかのようにする素振りが。

俺の言ったことが図星であると教えてくれた。


一緒にいればこんなにも分かりやすい人だったのか、と。

そんな発見ばかりなのが面白かった。