「それともう一つ、俺は決めた」
「はいはい、何ですか?もうお好きにどうぞ」
「水鳥嬢を俺の部下にする」
「・・・はい?」
「絶対に引き抜いてやる。覚悟しとけよ」
呆れ果てた表情は、小娘の顔でも大人の顔でも少女の顔でもない。
まさしく水鳥嬢本来の表情だった。
初めて見た本当の水鳥嬢に、まだ隠してる女の顔を見てみたい、と。
柄にもなくそんなことを想った。
「そんなに簡単に言われて、はいそうですか、と行くわけないじゃないですか」
「来たくなるさ」
「凄い自信ですね」
「本気だから」
「え?」
「水鳥嬢には本気だからな。来たくなるようにしてやるさ」
口から出た言葉は本心で。
俺の今の表情も剥き出しの本性そのものだった。
仕事の顔を脱ぎ捨てた自分の顔は、やけに男っぽいらしく。
姉曰く『女をオトすことしか考えていない顔』らしい。
自分ではそんなつもりは更々ないのだが、確かに本気の時にしかしない顔なのかもしれない。
仕事で口説き落としたいのか、本気で口説き落としたいのかは、さておき。
『傍に置いておきたい』というのが一番しっくりくる言葉だった。
「・・・お手並み、拝見しますよ」
「見てろよ」
「臨むところです」
今、蒔いた種が。
俺の元に来るころには大きく実っていることを願って。
そして、それを刈り取るのは自分であることを祈って。
残りの銚子を空にして猪口を呑み干し、計四升四合の日本酒を飲み切った。
待っていたのは。
飲んだ分だけの手痛い支払いと。
二日酔い確実とも思える酒の回り方だった。

