「今の会社は、随分と居心地が良さそうですね」
「・・・そうかも、しれませんね」
自分で理解をしているからこそ、会社では『あの』表情と態度。
その気になればどんな高みにでも上り詰めることが出来るであろう、その容姿を持ちながら。
本当は周囲に溶け込むことを望んでいる『女の子』なのだ。
男にちやほやされる『お客様』になりたい訳ではない。
一緒に仕事を作り上げていく『仲間』になりたいのだろう。
そんな彼女は、やはり広報なんかよりも広告代理店向きな人種だと思った。
知れば知るほど自分が育ててやりたい、という想いが強くなる。
それはまるで。
自分の手で女にしたい、と想う感情と良く似ていた。
錯覚しそうになる。
『部下』として最高の逸材を育てあげたいはずなのに。
極上の『女』に育てようとする、男の征服欲なのではないか、と。
それが『恋愛』なのではないか、と。
「決めたっっっ!!!!」
「きゃあっ!なんですか、急に!」
「今日から、南さんに敬語は使わない」
「はぁ・・・。お好きにどうぞ」
「それと『水鳥嬢』と呼ぶ!それで、親しみやすさを持ってもらえ!」
酔っぱらいの戯言だと思って、水鳥嬢は『はいはい』と俺の言葉を受け流していた。
水鳥嬢に映る俺の姿は、まさしく『酔っぱらっている』という感じなのだろう。
もっとも。
見た目の様子はあくまで『フリ』だ。
確かに酔いが回っているが、『酔っぱらい』と呼ばれる程、ハメを外している訳ではなかった。
酒で敵うことはなくとも。
中身を見せずにいることだけは、負ける気がしなかった。
酔ったふりをしながら中身を見せずにいることで、少しでも水鳥嬢自身を暴けると。
俺は知っていた。

