「そういう顔を、仕事でもすればいいのに」
ぽろりと零れた俺の呟きに、彼女は敏感に反応した。
さっきまであどけない顔で酒を飲んでいたはずの彼女は、あっという間に仕事の顔に戻ろうとする。
酔いも回っているせいか、俺はそれに嫌悪を露わにした表情で対抗した。
「そんな顔しなくても、仕事は回るんじゃないですか?」
「・・・どんな顔だって言うんです」
「作った顔で仕事をされるのは嫌いなんですよ」
「作ってなんかいませ――――」
「どこがですか?」
丁寧な口調ながらも強い言葉で発した俺に。
言い返すことが出来ずに黙ってしまった彼女。
それでも負けん気の強い視線をこちらに向けたまま、微動だにしなかった。
もうどうにでもなれ、と。
俺は自分の猪口に口を付け一気に飲み干す。
山形の日本酒のいいところは、どんなに酔っていても喉を通って行ってくれることだ。
空になった猪口に自分で酒を注ごうとすると、律儀に彼女が注いでくれようとしていた。
美人に酒を注いでもらって悪い気はしない。
それでも。
ずっと距離を取ったままの態度をとられるのは、好ましい態度ではなかった。
「ありがとうございます」
「・・・いいえ」
注いでもらった酒に口を付けると、身体がアルコールを拒否しているのが分かった。
せっかくの美味い日本酒を無理矢理呑み込んだことを後悔しながら、ほんの少しだけ酒をなめた。

