だから私は雨の日が好き。【花の章】






「尾上さん、大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。まぁ、南さんほど平気ではないですけど」


「すいません。つい『いつもの』ペースで飲んでしまって」




強調された『いつもの』という部分に、俺のプライドが反応した。

しかし店員が運んできた銚子を見て。

俺のちゃちなプライドは主張をすることさえ諦めてしまった。


そもそも。

彼女と対抗できると思っていたこと自体間違いだったのだ。

『女には負けないだろう』とタカを括っていた自分を、心底恥ずかしいと思った。



目の前の彼女は、とても嬉しそうに猪口を空にした。

空になった器に心底満足したように笑い、運ばれてきた銚子に手を伸ばす。

その手よりも先に銚子を持ち上げ、彼女を見つめて猪口を出すように促した。

最初は遠慮していたものの。

飲み始めると素直に器を差し出し、なみなみと注がれる日本酒を嬉しそうに眺めていた。


何種類かおすすめの日本酒を飲ませてみたけれど、気に入ったのはやはり山形の日本酒だった。

山形の日本酒は水の味で個性が決まる。

名水の宝庫であり、尚且つ吟醸酒を得意とする山形の味は、一言で言うなら『爽やか』。

彼女の飲みっぷりにぴったりだ。


俺の注いだ日本酒に口を付けて、するりと飲み込む。

喉を通った感覚をしっかりと感じてから器に視線を戻し、そしてにっこり笑うのだ。

その顔は、何度見ても飽きない表情だった。