どうして彼女に真っ直ぐな言葉をぶつけたいと思ったのかは分からない。

ただ純粋に、彼女に興味があった。

作られたその顔だけでなく、奥に隠しているあどけなさを見てみたいと思った。




――――俺の部下だったら、あんな顔をさせないのに――――




浮かんだ考えに俺は理解した。


そうか。

俺は彼女を自分の手で育ててみたいと思ったんだ。


化粧品メーカーの一社員としてではなく。

広告代理店のアシスタントとして。

彼女はきっといい仕事をしてくれるに違いない、と確信していた。


人の顔色を伺うのが得意な彼女は、きっと俺のしたいことを誰よりも理解しようとしてくれるだろう。

そうして頑張り過ぎている彼女を支えてやることも、俺には出来るだろう。



そんな風に仕事がしたいと思った。

俺の傍で、表面上だけでなく『本当の自分』で仕事が出来るようにしてやりたいと想ったんだ。

そして出来ることなら。

その顔を一番最初に暴きたい、と。

なんだか仕事とは関係のない、少し変態のような考えも浮かんだが、それはそっと打ち消した。




そんな風に彼女のことを考えながら片付けをしていると、自然と彼女を目で追っていたようで。

いつもは簡単に振り向いたりしない彼女が、困ったように俺の方を振り向いた。


絡んだ視線は戸惑いが浮かんでおり。

俺はそんな彼女の視線に満足して笑った。


笑った俺から逃げるように目線を逸らした彼女を見て、何故だか分からないが胸の奥が温かくなるのを感じた。