「あら、尾上さん!いらしてたんですか?」
「お世話になってます。大盛況ですね」
「そんなことはないですけど…南(ミナミ)が頑張ってくれてますから」
「南さん・・・ですか?」
「ええ。ほら、あのメイクをされてる彼女です。今年の新入社員なんですけど、あの見た目なので人目を惹いてくれて。それなのに高飛車なところもないので、みんなに可愛がられてますよ」
「なるほど。イベントをするのは初めてですか?」
「今日がデビューなんです。そんな風には見えないでしょうけど」
確かに、と頷いてイベントスペースに目を向ける。
メイクの終わった彼女は、とてつもない存在感を放っていながら目立とうとはせず。
一礼をした後、普通に接客に戻って行った。
沢山の人の視線を受けながら、居心地悪そうにするでもなく愛想を振り撒くでもなく。
ただ淡々と接客をしていた。
「・・・彼女は、いつもあんな感じですか?」
「あら、尾上さんったら南のこと気になるんですか?」
「いえ、そんなんじゃないですよ。真面目な方だな、と思っただけで」
「そうですね、真面目ですよ。浮わついた感じもないですし」
なんとも言えない感覚だった。
イベント会社にいると色んな人間に会うので、大抵の人間が何を考えているのか読み取ることが出来るようになる。
それがどんな相手でも、だ。
加えて、俺は元々その才に長けていた。
それなのに。
俺は、あの南という子が何を考えているのか読み取ることが出来なかった。
それをさせないあの子に。
少しだけ自分と同じものを感じたのだった。

