だから私は雨の日が好き。【花の章】







立ち寄った百貨店は会社から程近い所にある。

百貨店の一階は化粧品売り場ばかりで、男一人で歩くには少し居心地が悪い。

と周囲の同僚は言うが、俺は気にしたことがない。

話しかけられれば彼女への贈り物だと答えるだけだ。


目的のメーカーへと足を向けると沢山の人だかりが出来ているのが見えた。

休日ということもあり混雑しているのかと思えば、どうやらそれだけではないようだった。

人だかりの奥には椅子に座ったモデルらしき人物。

メイクアップの実演をしており、イベント事に力を入れているだけあるなぁと感心して近寄った。




「ではこれから秋の新色で発表になる商品のメイク講座を実施いたします。本日のモデルは、今年入社したばかりの弊社社員です」


「すっぴんで失礼致します。ですが、私がどのように変身するのか、楽しみにしていて下さいね」




その子は人前に出ることに慣れているようで、物怖じをしない堂々とした様子だった。

笑った顔があまりに作り物のようで。

生身の人間とは思えないほど整いすぎていた。


今まで人から綺麗と言われ続けてきただろうに。

それを鼻にかけることなく相手に嫌な印象も与えない。

人を惹き付ける容姿であることは間違いないが、人を惹き付ける中身であるようには思えなかった。




――――――まだまだ小娘だな――――――




それが俺の感想だった。

ここにいる必要を感じなくなった俺は、店舗の店長を探しその場を離れる。

振り向いた時に、目を瞑ったその子にもう一度目を向ける。

何故だかわからないが、その姿が目に焼き付いて離れなかった。