「まーな」
自分が崩したっていうのに、まるで他人事のように笑って、上沢さんは自分の持っていたコーヒーを飲み干した。
思いきり文句を言ってやりたいのに、なぜかそんな気が起きなくて……。
「もう……
好きに生きてもいいですかね」
少しずつ崩れていく、
偽りの姿の自分に、どこかホッとしているような気がした。
「いいんじゃね?
お前の性格的に、おとなしくしてるなんて無理だろ」
「……自分だって、思いきり似非くさい性格作ってるくせに」
「俺はもう慣れてるから。
物心ついたときからそうだし」
「……」
その言葉を聞いて、思わず顔を上げた。
意味深な言葉を吐いたのに、上沢さんの顔は何一つ変わってない。
「……新企画プロジェクト……
戻してくれてありがとうございます」
「べつに。もともと俺が原因だろ」
「そうですよね……。
けど意外だったので」
「そう?」
「はい。
上沢さんは人を引っ掻き回すのが楽しいだけと思ってたんで」
だから、あたしのことを簡単に好きとか他の社員さんに言ったのかと思ってた。

