「ったく、自分も忙しいんだから、そういうのは断れよ」
「……いいんですよ。
そういう役割ですし」
あたしはいつもそうだった。
今回みたいな嫌がらせのために押し付けられることは今までなかったけど、
あたしに頼めば何でもやってくれる。
文句も言えない真面目ちゃんだから。
だからこんなふうに、遅くまで残ることも少なくはなかった。
「……そういうの、やめたら?」
「え?」
「お前がどういうつもりで、そんな地味女演じてるつもりか分かんねぇけど……。
そろそろそんなふうに抑え込む意味とかないんじゃねぇの?」
「……」
言われて気が付く。
確かにあたしは、今まで目立ちたくなくて、こんな振る舞いをしてきた。
恨まれたくないし敵も作りたくない。
誰もあたしを眼中に入れてほしくない。
だけど今、
上沢さんの手によって、それはまんまと崩されてしまって……
「あなたのせいじゃないですか」
女子社員を敵にまわしてしまった今、
穏便な社会人生活が送れるわけない。

