歪んだ愛しさ故に

 
「お疲れ」
「え……?」


ふいに差し出された缶のミルクティー。

驚いて振り返ると、



「か、上沢さんっ!?」



すぐ後ろに立ってミルクティーを差し出す上沢さんがいた。


「それ、すげぇ甘いから体にしみるぞ」
「……ありがとうございます」


受け取ったミルクティーは、まだ熱々で、タブを開けると湯気が出てきた。


「できたの?ラフ」
「はい、一応……。
 見ます?」
「ああ。……って言いたいけど、今見たら絶対に意見言っちゃいそうだから。
 さすがにこれから言い合ってたら、夜が明ける」
「そうですね」


ふとあたりを見渡すと、あたしたち以外誰も残ってない。

当然っちゃ当然だ。
週末でもないのに、終電を過ぎた時間に人が残っているわけない。


「ずっとラフ書いてたの?」
「いえ……。その前にべつの業務があって……」
「……もしかして、浜野さんが帰り際にお前んとこ行ってたのって、仕事押し付けに?」
「え?あ、ははっ……」


「はい」とも「違う」とも言えなかった。

いい子ぶるつもりもないし、かばうつもりもなかったから。