決して他の人には聞こえない声。
それくらい、低くドスの聞いた声。
「からかわれてるだけって分かんないの?」
「……」
にこにことしている合間に見せる、敵意を込めた視線。
ああ、そっか。
上沢さんが好きな浜野さんにとって、あたしはとにかく面白くない存在なんだ。
しかも相手が、綺麗で可愛い人なら納得できる。
よりによって、こんな地味で根暗な女が相手だなんて……。
「調子に乗ってると痛い目みるよ」
それだけ言うと、浜野さんはさっさと帰って行った。
「………何この資料…」
浜野さんがフロアからいなくなるのを確認して、渡された資料に目を通す。
だけど明らかに資料不足。
こんなんで集計できるわけがない。
合間合間に抜けているのは、きっとわざとだ。
「はぁ……」
ほんと、嫉妬とか妬みとかくだらない。

