「まず他と差別化するために、インパクトがあることは大事です。
 分かりやすい一言をドンと出すのは当たり前のことでしたが、ここはあえて、その言葉だけでは意味がよく分からないPOPもいいんじゃないかと思いまして……。

 たとえば、二つの意味を兼ね揃えたものとか…」

「二つの意味?」

「えっと……じゃあ、木村さん、ここに書いてある文章を、木村さんならどう読みますか?」


「え?……ミカサはやる、だろ」


指差した場所には【ミカサはやる】と書いてある。
ミカサというのが、今まさに話題となっている、新規オープンするためのデパートの名前。


「はい。
 だけど、こうも見えませんか?

 ミカサ流行る」

「おお!」


「つまり、ひらがな表記にすることによって、二つの意味を兼ね揃えられる。

 より強く出したいほうの文章を、インパクトある文字色で大々的に表示し、その影のようにもう一つの表記の仕方でちらりと見せる。

 たとえばこんなふうに……」


即席でパソコンのペイントで看板を作成し、
【ミカサはやる】と言う字を赤字で、【ミカサ流行る】とグレーで斜め書きにしてうっすらと表示させた。



「……どうですか?」



ざっと説明し終わったところで、少し不安になりながら三人の顔を覗き込んだ。


じっと人のパソコン画面を見ていた三人は、ハッとした表情になり……



「おもしろいじゃん!!」



と声を合わせて言ってくれた。