「メガネ曇ってるから」
「あ……」
部屋に入って、エアコンはかかってないものの、外との温度差が激しくて眼鏡が曇った。
それを外してしまう上沢さん。
「外したいだけのくせに」
「そー。だって、素顔のほうがいいじゃん」
さも当たり前のように言って、勝手に眼鏡を棚の上に置いてしまう。
まあ、あたしも部屋では度の入ってない眼鏡なんか用はないからいいんだけど。
「ねえ」
「んー?」
「昼間の……どういうつもりですか?」
思い出した瞬間、やっぱりイラッとした。
勝手にみんなの前で、人を口説き中と言ったこと。
そのせいで、そのあとの女子の視線が痛いのなんの……。
「おもしろそうだったから」
だけど予想通り。
上沢さんから返ってきた言葉は、悪魔の笑みを含んだその答えだった。

