みんな騙されてる……。

この人は、冗談どころか、女をただの暇つぶしの相手でしか思えてない人だっていうのに……。


その証拠に、ばちっとあたしと目が合うと、
上沢さんは一瞬ニヤリと悪戯な笑みをあたしに向けた。


この人……
完全にからかってる……。


次に襲いかかってきたのは、みんなのあたしへの視線。


「と、豊田さん!どういうこと!?
 上沢さんからのアプローチに応えないって!!」


ガシッと肩を掴まれて、信じられないといった顔をされてるけど、
もしあたしが上沢さんの気持ちに応えたら応えたで、思いきり非難するんでしょ。

人間なんて、自分にとって面白くないことは
どっちに転んだって文句が出るもの。


思いきり奇異な目で見られているけど、ここで取り乱したら負け。

捕まれた肩に手を添え、そっと外した。



「すみませんが、業務が押してるんでここで失礼します」


眼鏡越しに、にこりと微笑んで、その場から一人オフィスへと戻った。



最悪だ……。

もうあたしは、この会社で穏便な生活は送れない……。