「ちょっと心配だったんですけど、
 何もなくてよかったぁ……!」


不安な顔色から、満面の笑み。

普通の男子なら、それって自分に脈がある?なんて思ってドキッとするふるまいだ。


浜野さんは、はっきり言って結構可愛いほうで、社内でもわりと人気である。
だけど彼氏がいる期間も多いので、諦めてる人も多いみたいだけど。



「そー。すげぇ口説いたんだけどね」



「……」


全ての人の空気が、一瞬止まった。

今、彼はなんと……?


「………え?」


一番初めにリアクションしたのは、その質問を投げかけた浜野さんで……
思いきり顔が引きつったまま、上沢さんにもう一度口を開いた。


「口説いたって……
 上沢さんが……豊田さんを?」

「そう。だけど全然なびいてくれなくて」

「じょ、冗談ですよね?」

「俺が冗談とかで女の子を口説くと思う?」

「……」


その質問に、浜野さんは黙ってしまった。