「んっ……」


降ってきたのは
お酒の味を感じるさせるほどの深いキス。


飲んでいないのに
まるで酔わされている気分にさせられる。


「……」


唇を離して見つめられたその瞳は
不覚にもドキッとしてしまった。



「……あたしなんかのせいで、素を出して……
 今まで築き上げたものを台無しにするなんてバカみたいですよ」

「そうだよな」


上沢さんはあたしの言葉に頷いて、くくっと笑いを漏らした。


眼鏡を棚に置かれ、
後頭部に伸ばされた手で、一つに結っていた髪をほどいた。



「でもさ。

 琴音がこんなにイイ女だって周りに知られるのは
 ちょっともったいねぇよな。


 俺だけの秘密でいたい」


「……」



今までどれだけの女を落としてきたんだろう。


今それを、思い知らされた瞬間だった。