「え……?」
予想外の言葉に、頭の中が真っ白になって、
抱きしめられているのに抱きかえすことも出来なかった。
だけど拓が抱きしめる腕の力は強くなるばかりで……
「琴音……琴音っ……」
うわ言のようにつぶやくあたしの名前。
自惚れなんかじゃないけれど
愛しさが含まれたその声は、胸の中がきゅっと締め付けられるほど温かい声だった。
「た…く……?」
あたしの声は、笑っちゃうくらい間抜けな声で
その声に反応して、拓がそっと顔を離す。
じっと見つめる漆黒の瞳。
ドキンと高鳴る鼓動。
「琴音……。
お前が好きだ」

