「じゃあさ。付き合うってなるとちょっとハードル高いじゃん?
 一回だけでいいから。
 今日、このまま抜け出してホテル行こうぜ」

「な……」

「玲子には俺から連絡しておくから」


にやりと微笑む健太。

完全に勝ち誇っている顔。


このまま流されてしまいそうな空気の中、なんとか自分を保ってグラスをぎゅっと握った。


「……やっぱり納得いかない」

「何が?俺と寝るのが?」



「アンタが、玲子さんの彼氏でいることだよ!!」



バンと両手でテーブルをついて、店内に響き渡りそうな大声で怒鳴る。

周りにいる人たちが、あたしたちのほうへ振り返った。


もうここまで来たら引き返せない。
なるようになればいい。

たとえ玲子さんに憎まれる結果になったとしても……。




「さすがあたしの自慢の後輩」



あたしたちの間に割って入った声。

まさかのその声に、健太とともにハッと振り返った。