「で?どうしてお前はこんな酔ってるの?」

「それは健太があたしを不安にさせたからだよ。
 琴音に付き合ってもらってたの」

「何言ってんだよ……。
 ごめんね。コトネちゃん」

「……いえ…」


体の中で、いろんな思いが湧き上がっていく。


この前の夜、襲われかけた恐怖。
玲子さんをだましていることへの苛立ち。
この場から逃げ出したい弱さ。


笑顔だけが凍り付いて、二人の会話に相槌を打っている。


こんな時、自分のポーカーフェイスは役に立った。



ブーブー……

「あ、あたしだ」


テーブルの上にあった携帯が震え、玲子さんが応答ボタンを押す。

自然と会話はストップし、ただ玲子さんの声を聞いていた。


「え?提出しましたよ?
 メールがない?………あ!!
 すみません!すぐに送ります!!」


何やら揉めていて、今日はこの場でお開きだな……と悟った。