「駐車場なんてないから。
 だからいつまでもここに停めてたら絶対に何か言われるし、話ならさっさと済ましてよ」

「はいはい」


マンションの前について、エンジンを切った。

お客さん用のはもちろん、マンションの住人用の駐車場もない。

3階建ての、アパートに近いマンション。
だけどそれなりに綺麗だし、清掃の人もいるし、あたしなりに結構気に入っている。


いつもの慣れたエントランスの扉を開けて、階段で2階へと上がった。
寒さでかじかむ手で、部屋のカギを開ける。


「入って」
「さんきゅ」


暗い部屋の電気をつけて、先に健太を招き入れた。


全ては、鍵をかけさせないため。
もしものときのために、何かしらの逃げ道は必要だから。



「シンプル過ぎ」
「あたしが、姫系のものを持ってるほうがおかしいでしょ」
「確かにな」


と笑う健太は、パッと見はただの旧友にしか見えない。

普通に話していれば、話も合うし、楽しいやつなのは確かで……。
だけど時に、男として暴走するのが困る。