曇ったレンズを磨いたあと、もう一度それをかけた。

再びまじまじと見つめてくる健太。
だけどそれには気づかないふりをして、健太を見返した。


「あの写真、消してほしいんだけど」


真顔で一言。
この思いしかあたしにはない。


「……その前に、琴音んちに案内してよ」
「なんで?話ならここでもできるでしょ」
「いくらなんでも、ずっとここでエンジンつけてるわけにもいかないだろ。
 エアコン消したら、車の中極寒になるけど」
「……」
「琴音の家で話をした最後に、ちゃんと写真も消すから」


こんなの、嘘を言っているようにしか見えない。


だけど弱みを握られている以上、あたしに拒否権なんかなくて……。



「約束だよ」



鋭く睨みあげて、そのコンビニからすぐそこの、自分のマンションへと案内した。