コンコン……

「?」


運転席の窓を軽く小突き、開けてと催促。

だけど健太は、叩くあたしを見て、眉間に皺を寄せている。


やっぱり、そういう反応と来たか。
おそらく、健太はあたしが琴音だと言うことに気づいてない。

それでも、もう一度窓を叩くあたしに、健太は疑惑の眼差しを向けたまま、窓を開けた。


「寒い。中に入れてよ」
「は?………え、……琴音?」
「だったら何?」
「いや……あ、鍵開けてあるから」
「ん」


地味な女があたしだと知った健太は、面白いくらい驚いた顔をしていた。

そこまで気づかれないと、返って失礼だと思ったけど、とりあえず温かい車の中に乗り込む。

本当は、こいつの車になんか乗りたくなかったけど、この寒さには勝てない。
いっきに温かい車の中に入ってしまったせいで、かけていた眼鏡が曇り、外して曇ったレンズを拭いた。


「……ほんとに琴音だ」

「当たり前でしょ」


眼鏡を外したあたしを見て一言。

驚きすぎだよ。