「ふぅ……」
ようやく、週末前として、区切りがついた仕事。
これなら、休日に仕事を持ち帰らずに済みそうだ。
ふと顔を上げると、フロアにはほとんど人が残っていない。
それもそのはず。
時刻ももうすぐ10時を示そうとしているから。
あたしもそろそろオフィスを出ないと、健太との待ち合わせに間に合わなくなる。
いっそのこと、帰れなくなるくらい仕事が忙しくなればいいと願った自分がいたのも確かだった。
だけど今日逃れたところで、健太から逃れられるわけでもない。
あの写真をネタに、また連絡が来るだけだ。
今日は何かしら、決着をつけないと。
対処法なんて何も思いついてないけど、逃げるわけにもいかないから……。
「……」
顔を上げた先には、難しい顔をしてデスクに向かう拓の姿があった。
決して近くはない席。
遠くの席で、何を話しているかなどは全く分からない距離。
自惚れなんかじゃないけど、
あたしが帰るところを見られたら、追いかけられてしまうかもしれないということを予想し、
近くの席に座っている人にだけ、軽く挨拶をして、そっとオフィスを出た。

