「ちょっと疲れが溜まっただけですよ。
 昨日、化粧を落とさずに寝ちゃって……。
 肌がガビガビになっちゃったから、何もしないで来たんです。眼鏡はカモフラージュで」

「そうなんだ。
 確かに、連日遅いと、帰ってそのまま寝るだけにしたいよね」

「はい」


にこりと微笑んで答えるあたしに、玲子さんも納得したようで、
「頑張りすぎないようにね」と一言残して、自分の席へと戻った。


大丈夫。
玲子さんはまだ何も知らない。
気づかれていない。


玲子さんの振る舞いに、ほっと胸を撫で下ろし、再びパソコンへと向かった。



久々に、ガラス越しに見るパソコン画面。
度の入っていない眼鏡は、はっきり言って邪魔にしかならなかった。


だけどあたしが、今日こんな格好をしてきたのは、決して化粧を落とさずに寝てしまったのが理由なんかじゃない。


このまま夜は健太と会わなくちゃいけない。

そんな健太を幻滅させるには、この方法しか思いつかなかった。