「ま、さっきの話は今度飲みに行ったときに、ちゃんと聞くわ」
「そうですね」
中途半端に話してしまった内容。
多分、玲子さんは気になって仕方がないはず。
うずうずする気持ちを抑えて、次の会話へと話を続けた。
「それで、健太がさ」
「……」
まさか、ここでその名前が出てくるとは思っていなくて、
さっき拓の名前を聞いた時以上に心臓が飛び跳ねた。
というよりも、さっきは胸が熱くなるという意味で鼓動が高鳴ったけど、今は嫌な気持ちがいっぱいに広がっている。
「琴音と上沢の話をちらっと話したら、面白がって一緒に飲みに行きたいとか言っててさ」
「え……?」
自分の名前が出てきて、拓はちらっと顔を上げた。
だけどその様子からして、健太という名前が、この前鉢合わせしてしまった、あたしのキスの相手だとは分かっていないようだ。
「どう?
今度4人で飲みに行かない?」
その質問に、もう何も返事が出来なくなった。

