「あーあ、本人来ちゃったじゃん」
「……ですね」
本人だけならいい。
だけどその隣には、いつものメンバーと言っていい2人の同僚の人がいるので、さすがにその人たちの手前で話すわけにもいかない。
「お、お疲れー」
「おつかれ」
「お疲れ様です」
向こうもあたしたちの存在に気づいて、あろうことかその隣に座ってきた。
まだまだいっぱい席があるんだから、離れて座ればいいのに……。
「最近、二人って仲いいよな」
「いいでしょ。あたし、琴音ラブだから」
「……それは負けらんねぇな」
拓に向かって挑発的な笑みを向けた玲子さんに、猫をかぶった状態で宣戦する拓。
あたしのことで誰かが争うなんて、目の前にいるこの松野さんたちは想像がついただろうか……。
「だから、勝手に話入ってこないでね」
「気になる会話が耳に入ったら、それは約束できない」
ああ、やっぱりこの二人って仲いいんだ……。
なんてことを、今になって思った。