「そういえばさ、最近上沢とどうなったの?」
「え……」
上沢、という名前を聞いて、ドクンと心臓が波打った。
「付き合ってはいないの?」
その質問が、一番困る。
確かに、付き合っているか付き合っていないかと言われれば、今のあたしと拓は付き合っている。
だけどお互いに本気ではない付き合いは、すぐに別れてしまう可能性のほうが大きく、そうなったら、周りの人に気を遣わせてしまいそうだ。
だから社内の人には、いまだに拓があたしへ片想いをしている、という通しになっていた。
でも、玲子さんだけならいいかな……。
玲子さんは、拓の本性に、うすうす気づいている感じだし……。
そう思って、悩む口をおずおずと開いた。
「……一応……付き合ってます……」
「あ、やっぱり?」
「はい、でも……。
本気の付き合いとかじゃないんです」
「え?」
さすがにその言葉には首をかしげていて、周りに会社の人がいないかを確認しようと辺りを見渡したところだった。
「いらっしゃいませー」
「あ……」
顔を上げて真っ先にうつった人物。
そこには、数人の同僚と一緒に入ってきた、拓の姿があった。