「すみません。今日は疲れてるので」
「そう?でも帰ってからご飯用意するのとかだるくない?
 それなら、外で食べちゃったほうが楽じゃん」


確かに楽だけど、中村さんと二人でご飯を食べることが苦痛なんだって。


「いいじゃん。
 俺、もっと豊田さんのこと知りたいし」

「…っ」


突然抱かれた肩。

ぞわっと鳥肌が立った。


やっぱり男なんか嫌い。
そうやって、ちょっとでも見てくれが変われば、すぐに下心が表れてくるから。


沸々と湧きあがる怒りを抑えて、
冷静に肩を抱いている手を外した。


「本当にすみません。
 二人きりでご飯とか、行く気ないんで」

「なんだよ、それっ……。
 ちょっと前まで、誰にも相手にされない女だったくせにっ……。
 調子に乗ってんじゃねぇよ!」


その言葉を吐いたと同時に、エレベーターのドアが開いた。


開いた先を見て驚く。

そこには、上沢さんが立っていたから。