茜が入院していた、たったあれだけの間に通学路には新しい家が1棟建っていた。とてもセンスの良い外観だった。
しかしまだ人が住んでいる気配はない。


「おはよう」

茜の担任が車で追いついた。

「あ、おはようございます」

「体調どうや?」

「快調です。へへっ」

体調を気にしてもらえて少し照れた。

「元気そうやん、歩いて行くか?」

担任が少し意地悪な顔をしてそう聞いた。

「えー、乗せてえや」

「はいはい、乗り…」

担任は助手席のドアを開けようとした。

「あー…、やっぱやめとく。歩いて行くわ」

「どっちやねん」

「歩いて行く。一日目やし、まだ時間あるしー…」

「大丈夫か?俺はいいねんで?」

「んー、…そんな甘えてられへんし。」

「そうか?ほな俺行くわ、気ぃつけや」

「はーい」

担任の車はあっという間に見えなくなっていった。


茜は正直車に乗りたかった。担任と一緒に登校したかった。担任が通り掛かるのを期待していた。
でもいざそういう場面になると、担任を突き放すまではいかないでも、素直になれない自分がいる。
それを見て、担任はどんな反応をするか試している自分もいる。


「はぁー…」


『あたしって計算高いな』と自己嫌悪のため息が出た。