「吉本さん・・・?」

「あら、名前覚えてくれたん?」

「え?」(あ、すいません、名札見ただけです・・・)

「何かあったら、あたしに何でも言いやー。ほい、おしまい!」

吉本さんはあっという間に包帯を取り替えて、足を一発ポンと はたいた。

「吉本さん、あたし留年するかも知らんねん・・・」

「えー?そら大変やん。あんまり やんちゃ、したらあかんでー」

「えっ、違いますよ!ほんまは大丈夫な予定やってんけど、盲腸で入院長引いて・・・」

「でも、『するかも知らん』って、まだしてへんねやろ?」

「まぁー・・・」

「ほな、落ち込むのはまだ早いんちゃう?留年してから落ち込み!」

「・・・!」

てっきり慰めてくれると思っていたので、呆気に取られてしまった。

「ほい!元気出す!頑張って進学する!」

「あ、はい」

「あたしなんか、看護婦になるのに3回も試験落ちてなぁ。でも今は看護婦や!」

「え?(笑)」

「あ、ちゃうな、今は看護士か、ハハハっ!(笑)」

「ハハッ・・ハハハ・・・」

つい、つられて笑ってしまった。

「とにかく、ご飯食べて元気出し!な? 大丈夫やから、人生長いようで短いねんから、半分以上落ち込んでたら損やで!」

なんとなく、わかるような、わからないような・・・。
でも、人生は短いか・・・看護士さんに言われたら、説得力がある。

「それと、あたしのことは“よーちゃん”でいいから」

「よーちゃん?」

「あたし≪吉本陽(よう)子≫ってゆーねん。せやから、よーちゃん」

「よー・・・ちゃん(笑)」

「よし、笑った。笑った顔のが可愛いで、元気出しや!ほな、また朝ごはん終わったら薬持ってくるからね」


よーちゃんは本当に陽のように明るく、こっちまで陽に照らされたように明るくなれる。よーちゃんにとって、看護士は天職なのかもしれない。