絵里奈に言ってみた。師範の息子が担任だったってことを。

「えーっ!まじで?」

「めっちゃびっくりした」

「家庭訪問やん(笑)」

「せやなぁ、今年は担任が身重やったからなかったしな」

「茜のクラスなかってんな、家庭訪問。うらやまーやん」

「うらやまーって、絵里奈は頭いいし、担任来ても困らへんやん」

「まぁねー(笑)」

「なんやねん(笑)」

「うそやん、もっと上目指せとか、これ以上無理やっちゅーねん」

「そんなん絵里奈んとこの担任の口癖やん、気にせんとき」

「まぁなぁ…まぁ、そんなことは どうでもいいねんけど」

「けど?」

「家庭訪問っつったらオカン来るやろ?」

絵里奈の実家は山奥の田舎で 高校どころか、小学校もない。
中学はバスで通ったが、田舎なので 乗り遅れてしまうと、次のバスは2時間後。山にも海にも大した娯楽がないので、そのバスは通学か通院くらいにしか使われないので2時間に1本くらいでも支障はない。
そして、バス通学に付き物なのが早起きだ。絵里奈はそれがイヤで 高校入学と同時に学校の近くにマンションを借りて住みはじめた。