「何で絵里奈がカレー作ったらこんなに美味しなんの?」

特に理由はないと思ったが、会話の流れで聞いてみた。

「魔法の手やからやん、ゴッドハンドや!」

絵里奈は、手のひらを私に突き出した。

「ゴッドハンドは神の手やんかいさ。」

「どっちも一緒やん。」

「でもほんまに美味しいわ。何か入れてるん?」

「秘密やっ。」

秘密ということは、本当に何か入れているのだろうか?

「えー!教えてぇやー。」

「っていうか、一緒に作っててんからなんか入れたらわかるやん。」

絵里奈はまたカレーを口に運ぶ。

「ほんまに何もいれてへんの?」

私がそういうと、絵里奈はニヤっと笑って

「絵里奈様の爪の垢を煎じたやつを入れてんでー」

と得意げに言った。

「もー、汚いこというなやー!」

「茜が聞くからやん!」

絵里奈は、“質問したのに、聞きたくない”という私の矛盾を指摘した。

「ほんまはコーヒー入れてんやん。」

「嘘やーん。」

「ほんまやで、茜が風呂に湯 張りに行ったときちゃちゃっと入れてん」

「“いれる”ってこっちの淹れるちゃうかったん?」

私はコーヒーを淹れる動作をしてみせた。

「こっちの入れるやで?」

絵里奈はカレーに入れるジェスチャーをした。

「へー、でもコーヒーの味せぇへんで。」

「あたり前やん!コーヒー味のカレーとか食べれたもんちゃうで。」

「食べたことあるん?」

「1回だけな。」

絵里奈は遠い目をして、笑った。

「げー!どんな味した?」

コーヒーもカレーも味が濃いので、ミックスされた味の想像がつかない。

「せやから、あんなもん食べられへんって」

想像は出来ないが、まずいらしい・・・。

「でも何でコーヒーなん?フォンドボーとか野ジュースとかやったら よー聞くけど。」

「テレビでやっとってん。コクが出るねんて。コクとかあたしらにはわからんってな!」

絵里奈がケタケタ笑うので、私もつられて笑った。

「せやな。でも、美味しなってんのはわかるで。」

「そう?」

「うん。普段のより美味しい。」