まずは一つ目。

 リストラに遭い無職だから進学はさせられない。悪いけど働いてくれ。大学受験を控えた高校三年生の息子にこれは確かに言い辛い。

 しかも、ナオトの誕生日は7月24日。夏休みのこの時期は受験生にとっては正に追い込みの時期である。

 そんなタイミングで突然受験を諦めてくれと言うのは父親として断腸の想いだろう。

しかし、この考えはナオトの頭の中ですぐに否定された。そもそもヒロシがリストラされる訳が無いのだ。

実はこう見えて彼の父親は結構な有名人だったりする。その世界ではかなり名の通った小説家。今は本人曰わく休業中らしいが。

 本屋を覗くと今でもヒロシが書いた本がいくつか置いてあったりする。

……小説家にリストラとか無いよな。それに今でも雑誌の取材とかされてるし。

次に二つ目。

……実は母さんと離婚する事になったんだ。

 考えるまでもなく無かった。誕生会での二人のイチャイチャっぷりがナオトの脳裏に浮かぶ。むしろお互いにいい歳なんだから少しは自重しろと言いたいくらいだった。

 そして、最後に三つ目。

 正直、これが一番有り得るんじゃないかとナオトは思う。