某年7月24日。トキガミナオトが18回目の誕生日を迎えたその日。それは何の前触れも無く始まった。

 身内だけで行われた小さな誕生会も終わりを迎え、家の中では母親や歳の少し離れた姉達が後片付けに奔走している。
そんな中、彼は二人だけで話があるからと父親のヒロシに玄関先まで呼び出されていた。

「で?話ってなんだよ?」

 淡々とした表情で問いかけるナオト。
普段何事にも動じないマイペースなこの父親が今日に限っては朝からずっと様子がおかしい事には気付いていた。
だから、ヒロシから話があると言われた時、遂に来たかと冷静に思っていた。

「……ああ。言い辛いんだけど……実はね。ナオ君。」

案の定、歯切れの悪い答えを返すヒロシ。その様子を見てナオトは父親の異変に気付いてからずっと考えていた自分が思う父親が息子に言い辛い事をいくつか頭に思い浮べていた。