シツジ ✖︎ オウジ ⁉︎



一時間後。


姫は新しい執事をともなって自室に戻っていた。


「改めまして、短い時間ですが、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくです」


奥寺が食後のお茶を準備しているのを傍目に、姫はベランダに出た。


東洞家の庭園には母の趣味で背の低い植物は植えられていない。


そのかわり、今の季節なら梅の花が満開に咲き誇っている。


こうしてこの家で梅を見れるのもあと何回かな…。


先ほどのお見合い話が思いのほか重くのしかかってきて、姫の表情に一瞬陰りがさす。


そのときふと、華やかなアップルティーの香りが漂ってきた。


それに誘われるように、白い花弁が姫の前を横切った。


まぁ、なるようになるよ。


振り向いた姫はいつも通りのお気楽な姫だった。