そんなある日の昼休み。
珍しく奥寺が訪ねて来なかったので、姫はぼっちでお弁当を広げていた。
いつもはチャイムが鳴ってすぐ登場する奥寺の姿がないため、周りからの視線が若干痛い。
いわく、
「ついに奥寺様に愛想尽かされたんじゃない?」
「そうね、忙しい奥寺様だもの、あの子に構っている暇なんてないのよ」
前者はともかく、後者は大当たりである。
姫は最近知ったことだが、奥寺はこの学校の生徒会役員でもあったそうで、実は今、来週に迫った体育祭に向けた準備が大詰めなんだとか。
一介の執事であるはずの彼が何故、役員なんかを? と聞いてみたら、それとなくはぐらかされた。
結局、奥寺のことはほとんど知らないまま、もうすぐ転校から1ヶ月が経とうとしていた。

